waiting-listのブログ

placeof - プレイスオブ の開発ブログです

placeofを支える技術

スクリーンショット

 


placeof - プレイスオブ の技術構成

Next.js

このサービスには多種多様なフォームがあり、Server Actionsは試験的にcontactページで使っています。Intercept Routesも使っています。


PlanetScale/Prisma


水平スケール出来るMySQLであるPlanetScaleに興味を持ち使っています。deploy requestをしてマイグレーションをする方式も違和感なく使えています。PrismaとDrizzleで迷いましたが、開発を始めた段階でPrismaの方が情報量が多く、出来ることもそこまで変わらないと感じ、Prismaにしてます。

Vercel 

Cloud Runでリリースする予定だったのですが、Vercelが想像以上に使いやすくこのまましばらくは使い続ける気がします。Vercelの環境設定画面も、スペックを動的に追加する画面の参考になりました。

 

主な実装ポイント

スペックを動的に追加する画面

全世界の物件・建築サイトをいろいろ見ましたが、スペックの表示としては新建築のサンプルが一番良い気がしました。
このような表示が出来るような情報を入力するフォームを作るべく、「スペック名のサジェスト機能」をshadcnのComboboxを使って実装しました。こちらのissueが参考になりました。
また、「スペックが[C値]のときは、値の入力欄は[数字]」「スペックが[〇〇のブランド]のときは、値の入力欄は[文字列]」のようなvalidationをしたく、ZodのsuperRefineを使って実装しています。

 

地図

地図表示にはMapboxを使っています。物件登録時に郵便番号が入力されると内部で緯度経度情報を持ち、描画時に大まかな範囲を表示しています。
とはいえ、このためのデータを用意するのが意外に難しかったです。結局、GeoNamesのデータを使わせて頂くことにしました。精度はともかくほぼ全ての国に対応可能なようです。必ずしも細かな精度は必要ないので助かりました。

ハザードマップなり国土地理院のベクトルタイルなりPlateauなりいろいろな不動産データを追加することも考えましたが、全世界のいろいろなサイトを調べて、プレイスオブではひとまずシンプルで良いかなと感じています。

i18n


不動産の本源的価値は数年後の次の需要であることから、任意の国に物件を有する方が他国の方にもそれぞれの言語でアピールできるするために国際化は重要です。

Next.jsのi18n機能はURLの変更が要請されるため、react-i18nextでi18n機能を作りました。こちらの記事を参考にクライアントサイドとサーバーサイドで使っています。Zodとの連携もしています。hydration errorが発生しましたが、i18nextの設定に新しい言語ファイルを追加し忘れていただけでした。

なお、距離や面積の単位も国ごとに違うので、MySQLではメートルで保持し、見る方の国によって表示を変えています。この辺のベストプラクティスは正直良くわかっていないです。

また、物件の特徴を入力する際に、ユーザーが動的に入力できるようにしたかったのですが、こちらもi18nとの兼ね合いでどうするべきか、試行錯誤中です。

 

日々の投稿


「不動産ポエムに客観的基礎を与えたい」観点から、可能な限り写真情報を無くしていますが、だからこそ一つ一つの日々の投稿に絶妙なポエムさがあるべきだと思いました。一番良いのはこちらの写真家用の投稿サイトかと思いました。異なる写真サイズ対応、モバイル対応、メタ情報、グリッド表示などなど。
https://imgs.so/posts/12f6b0 

ただ、これだとポエム過ぎる気もして、試行錯誤中です。

 

開発の背景


物件周りのペインとして「情報の非対称性」「何かと決断を急がされる」「物件価格が不安定」などがあります。
物件の全情報を知り得る物件所有者がしっかり情報発信して、潜在的な供給と潜在的な需要のマッチングが出来るならばそうしたペインの解消になる気がしました*1。一方で、物件周りの情報発信は何かとポエムになりやすくふわふわしているのも気になる印象です*2

開発の背景


物件周りのペインとして「情報の非対称性」「何かと決断を急がされる」「物件価格が不安定」などがあります。
物件の全情報を知り得る物件所有者がしっかり情報発信して、潜在的な供給と潜在的な需要のマッチングが出来るならばそうしたペインの解消になる気がしました*3。一方で、物件周りの情報発信は何かとポエムになりやすくふわふわしているのも気になる印象です*4

開発の背景


物件周りのペインとして「情報の非対称性」「何かと決断を急がされる」「物件価格が不安定」などがあります。
物件の全情報を知り得る物件所有者がしっかり情報発信して、潜在的な供給と潜在的な需要のマッチングが出来るならばそうしたペインの解消になる気がしました*5。一方で、物件周りの情報発信は何かとポエムになりやすくふわふわしているのも気になる印象です*6

物件の「スペック情報」や「特徴」や「関与したクリエイター」の情報などを詳しく書けるようにすることで、新しい潜在的な供給と潜在的な需要のマッチングが出来るのでは、と思い開発をしています。

TODO


- 関与したクリエイター周りの動的フォームをしっかり作る
- 「潜在的な買い手や借り手とつながる」世界観をより強く打ち出す機能の開発

 

まとめ
 

是非物件を登録してみてください

placeof - プレイスオブ

https://placeof.app

 

参考にしたサイト


https://qiita.com/tak001/items/cfbaa9dcb542929ff235
https://zenn.dev/aiji42/articles/171f26af4e5b5c

*1:社会全体で考えると、所有権が変わると高確率で住宅が破壊されることも課題かもしれません。日経平均株価は1989年の最高値を更新しましたが、土地価格はほとんどの地点で失われたままで、国民経済計算の土地資産額も失われたままです。様々な論点があり得えるものの、個々の不動産取引や管理が中長期的な需要を見据えて行われるような「継承的取引」が増えることで、社会全体の富の蓄積につながる気もします。

*2:ちなみに、一番好きな不動産ポエムは大正12年の「田園都市株式会社」による『田園都市案内』です。もし大正12年にプレイスオブのようなサービスがあったら「田園調布に空き家が増えている!もうオワコン!」みたいなことを次の世代が言うことはなかった、かもです。何故ならば、そこに住みたいという「原始的な感情」が蓄積されるからであり、それは「資本の本源的蓄積」よりも今の資本主義社会にとり必要なものかもしれません。

*3:社会全体で考えると、所有権が変わると高確率で住宅が破壊されることも課題かもしれません。日経平均株価は1989年の最高値を更新しましたが、土地価格はほとんどの地点で失われたままで、国民経済計算の土地資産額も失われたままです。様々な論点があり得えるものの、個々の不動産取引や管理が中長期的な需要を見据えて行われるような「継承的取引」が増えることで、社会全体の富の蓄積につながる気もします。

*4:ちなみに、一番好きな不動産ポエムは大正12年の「田園都市株式会社」による『田園都市案内』です。もし大正12年にプレイスオブのようなサービスがあったら「田園調布に空き家が増えている!もうオワコン!」みたいなことを次の世代が言うことはなかった、かもです。何故ならば、そこに住みたいという「原始的な感情」が蓄積されるからであり、それは「資本の本源的蓄積」よりも今の資本主義社会にとり必要なものかもしれません。

*5:社会全体で考えると、所有権が変わると高確率で住宅が破壊されることも課題かもしれません。日経平均株価は1989年の最高値を更新しましたが、土地価格はほとんどの地点で失われたままで、国民経済計算の土地資産額も失われたままです。様々な論点があり得えるものの、個々の不動産取引や管理が中長期的な需要を見据えて行われるような「継承的取引」が増えることで、社会全体の富の蓄積につながる気もします。

*6:ちなみに、一番好きな不動産ポエムは大正12年の「田園都市株式会社」による『田園都市案内』です。もし大正12年にプレイスオブのようなサービスがあったら「田園調布に空き家が増えている!もうオワコン!」みたいなことを次の世代が言うことはなかった、かもです。何故ならば、そこに住みたいという「原始的な感情」が蓄積されるからであり、それは「資本の本源的蓄積」よりも今の資本主義社会にとり必要なものかもしれません。

様々な家の売り方: Distribute It Yourself

アメリカのFSBO市場について書きましたが、調べてみると他にも面白い家の売り方がいろいろありました。
ところで、アメリカの不動産市場と日本の不動産市場の最も顕著な違いは「在庫データ」が分かるかどうかだと思います。これが分かるぐらい不動産データが整備されているというのが凄いです。その他にもデータがありすぎるぐらいです。

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https://www.redfin.com/news/data-center/

1. iBuyerの台頭

まずはOpendoorなどのiBuyerの台頭でしょうか。iBuyerとはたくさんのデータをもとに高度なアルゴリズムを使った既存住宅の大量転売屋と言えると思いますが、何となくカッコイイし不動産市場に新しい流動性をもたらす可能性など期待されていたようです。
ただ、不思議なことにあまり利益を得ていないようです。恐らくOpendoorが注目され始めたこの1~2年がアメリカの不動産市場が調整期だったからだと思われます。iBuyerの良いところはすぐに現金で買ってくれるところですが、不動産価格が上がっているときはそのようなニーズは強くなく、不動産価格が下落しているときは利益を出すのが、彼らのビジネスの難しい点にある気がします。ちなみに、datadoor.ioを見るとOpendoorなどのiBuyerがどの地域でどれくらいの住宅をいくらで売ったり買ったりしたかのデータがほぼ全て分かります。
また、住宅ローンの組成をどれくらい行なったかも、こちらで分かります。昔見たときは20人くらい住宅ローンの専門家が居たのですが、今見ると0人でした。

画像
Sponsered MLOsが0人

2. つなぎ融資系ローン

家を売るときの一番のペインは、次の家に入居するタイミングと今の家を売るタイミングである観点から、つなぎ融資系の住宅ローンも充実しています。これらはiBuyerの逆を行くとされています。というのも、iBuyerの場合、不動産仲介業者は手数料収入を得られませんが、このサービスの場合、まずは次の家を買って引っ越してから今の家を売るので、不動産仲介業者は2回手数料を得られます。代表的なサービスとして、knockやorchardがありますが、住宅ローンの斡旋や不動産仲介で利益を得るようです。

3. アラカルト仲介

FSBOのように全てを自分でするのではなくて、不動産仲介のサービスの切り売りも増えています。Flat-MLSと言われるようなMLSデータベースに情報を掲載してもらうだけのサービス、オープンハウスに対応するオプションなど仲介業務の必要な部分だけの提供を受けることが出来ます。

4. 仲介業者が内々に売る


物件の売却を受任した仲介業者がMLSに登録する前に、自前で売ることをPocket Listingと言うそうです。売り主のプライバシーも守られ、仲介業者も両手仲介的な手数料収入になります。2021年段階で、全物件の2%ぐらいがPocket Listingされているようです。
Pocket Listingのプラットフォームもありましたが、NARの規則変更でエージェントはMLSに1 営業日以内に登録することが要求され、このサービスは停止しています。今は、NARとの訴訟中です。日本で一般媒介で契約した物件でreinsに登録していないデータベースみたいなものはニーズあるでしょうか。

5. もうすぐ売ります by 仲介業者

Pocket Listingは実質禁止になったとはいえ、もうすぐ売りますcoming soonとして表示するのはOKみたいで、compassのcoming soon のような不動産仲介業者が持っているデータで今後売る予定リストみたいなサービスがあったりします。 

6. もうすぐ売ります by 売り主

Zillowのmake me moveは、エージェントではなくて売り主がもうすぐ売りますとして直接webポータルで告知して潜在的な需要を把握するような機能です。FSBOとの違いは、今売っているか将来売るかの点にあります。このサービスは停止しましたが、奇しくもwaiting listを管理できるようにするプレイスオブの方向性と比較的近いように感じます。アメリカの不動産市場で多発しているNARに対する独禁法訴訟の行方ではこの機能もZillow内で復活する気がします。

7. 不動産オークション

数十億円するような高級物件のオークションサイトであるConcierge Auctions も興味深いです。オーストラリアだと一般の物件もオークションで売ったりしているようです。

8. 不動産エージェントのタレント化

Ryan Serhant氏のように不動産エージェントがタレント化し物件売却を依頼出来るのも面白いです。Pocket Listingのプラットフォームを作ったのもマイケル・ジャクソンの住宅を仲介した著名なエージェントでした。netflixでも不動産エージェントが主役のシリーズが結構ある気がします。

9. 著名建築家の住宅を売る

日本では著名建築家が設計した住宅とはいえ躊躇なく解体されることがありますが、、、アメリカではフランク・ロイド・ライトの家で今買えるものなどが簡単に分かるようです。何故こういう売り方が日本の不動産流通市場でもっと増えていかないのか、は難しいところです。
台湾に昔の日本式建築が多いことは知られているかと思いますが、韓国も意外に多いようです。旧満州の満鉄社宅も素晴らしいです。これらの国も自然災害が多く湿度も高いと思いますが、日本とは何が違うのでしょう。

こうした多様な売り方が増えていることは、多様な物件が社会に存在し継承されることに繋がると思われます。DIYがDo It YourselfだけでなくDistribute It Yourselfの時代になる日は来るでしょうか。

 

waiting-list.hatenablog.com

アメリカのFSBO市場

年間600万件ほどの既存住宅取引があるアメリカではその7%ほどがいわゆる直販売であるFSBO(For Sales By Owner)という取引手段を行なっていると言われています。この数字は不動産仲介業者の団体であるNARが発表しており、彼らのデータベースであるMLSに登録されない取引が20%ほどあることにも留意する必要があります(MLSと登記ベースのデータの差)。それを考慮すると全取引の10%ほどでしょうか。

現在ではほとんどの住宅情報がネットで見れるのに、不動産仲介業者の数も平均収入も増えていることは興味深いです。
アメリカの賃貸市場では少し状況が違い、40%ほどの所有者が自分で借り主を探しており、残りの大部分の所有者も管理会社に任せているようです。大都市では、賃貸市場で仲介業者を使う傾向があるようですが。

zillowによると所有者の36%ほどが売るときにFSBOを試みるそうですが、結局大多数が諦めてしまうようです。FSBOの場合は住宅取引時の差別を禁止した「住宅公正法 fair housing act」の対象外のようですが、それでも色々と難しいようです。

価格面でも、NARによると不動産仲介業者を使った場合とFSBOの場合では、FSBOの方が安くなるようです。一方で、そうしたNARの主張には疑問を呈する声やそもそも不動産仲介業者が自分の物件を売るときと業務で他人の物件を売るときに価格差があるのでは、という指摘もあります。

不動産仲介業者の数も平均収入も増えているこうした状況をある種の「独占」、と捉えているような訴訟も増えています。
①倒産したrex社が不動産ポータルのzillowを訴えているもので、NARがMLS掲載物件と非MLS物件を同一ページに表示することを禁止した規則により損害を与えられたというもの(Real Estate Exchange Inc v. Zillow Inc, U.S. District Court, Western District of Washington, 2:21-CV-00312-TSZ)
②サービスを停止したPLS社がNARを訴えているもので、不動産仲介業者が物件を扱うときに即時にMLSに掲載しなければならないとした規則により損害を与えられたというもの(The PLS.com LLC v The National Association of Realtors et al, U.S. District Court, Central District of California, 2:20-cv-04790-JWH-E.)
③以前も取り上げた、「売り手が買い手側の不動産仲介業者手数料を決める」規則により損害を与えられたというもの
MLSがNARの規則に従っていることに対する訴訟(Nosalek v. MLS PIN)。一旦和解しましたが、司法省が介入裁判続行に。

こうした訴訟合戦はもっとエンターテイメントとして楽しめる気がしますが、もし仮にこうした規則全てが撤廃になったら、MLSを使わない物件が増えたり、買い手側と売り手側の仲介業者が同じになったり(両手仲介?)、するのでしょうか。MLSではない新しいデータベースが生まれてくるかもしれません。

そしてプレイスオブのようにFuture Sales By Ownerのようなサービスがアメリカで普及して、所有者がすでに客付けが出来た段階で物件を売ろうとするならば、どうなるのか興味はつきません。

(実験的にnote.comに記載した内容をhatenaブログにも持ってきてみました)

アメリカで現在進行中の不動産手数料に関する巨額訴訟

2023年3月現在、アメリカでは現在進行系で不動産仲介手数料に関する大きめの集団訴訟(Sitzer v. National Association of Realtors Case No. 4:19-cv-00332-SRB)があります。

この訴訟の重要な前提は
アメリカではreal estate agentとrealtorの2種類の不動産仲介業者が居る。
・半分以上のreal estate agentはrealtorになる。
・realtorはNARにより商標登録された職業であり、会費を払うことでNARが提供する様々な特典にアクセスすることが出来る。
・様々な特典の一つは各地域の不動産データベースであるMLSへのアクセスであり、realtorではないreal estate agentではアクセスできないことがある。
・売り主のreal estate agentがrealtorである場合、NARの規則により買い主の不動産仲介手数料を売り主が決める。また、買い主は仲介手数料の交渉は出来ない。不動産仲介手数料の相場は売買代金の6%程度で、それを売り主・買い主の不動産仲介業者で分ける。
・これまで何度もNARに対する不動産仲介手数料関連の訴訟があったが、ほぼ全てNARが勝ってきた。
アメリカの不動産仲介手数料総額は10兆円程度/年間。
などでしょうか。

そして、今回の集団訴訟は「買い主の不動産仲介手数料を売り主が決める」ことの是非が問われています。
現段階のこの訴訟のステータスは、「ミズーリ州の連邦裁判所の陪審は18億ドルの評決したが、裁判官はまだ判決を下していない」となります(ロイター記事)。裁判官が判決を下したあとに、NARは第8巡回区控訴裁判所に控訴するようです。

また、陪審の評決を受けて、関連した他の集団訴訟が増えており、司法省の独禁法調査もあるようです(こちらの年表が参考になりますが、非常に複雑です)。
関連した他の集団訴訟に巻き込まれているバフェット氏のバークシャーは「2023年の年次報告書で、10月の評決によりホームサービシズは、弁護士費用やその他の潜在費用を除き、最大54億ドルの損失に直面する可能性がある」とのことです。こちらの集団訴訟の現在のステータスは「仲裁合意があったのでそもそも米国裁判所の管轄ではない」との控訴が米国連邦最高裁判所にされているようです(ロイター記事)。

これらの一連の訴訟の行方は不明ですが、一部の不動産仲介業者は和解案に応じたり不動産ポータルのredfinがNARから脱退するなど既成事実が積み重なっているなか、アメリカの住宅市場が大きく変わる可能性が高いように思います。
そもそも、今回の巨額訴訟が、これまでのNARに対する訴訟とは違い進展しているのは、不動産業者がしている「マーケティング」「契約交渉」の価値がわかりにくくなっている点があるように思います(こちらの記事が良記事でした)。
特に、前者はwebポータルの発達だけでなく、SNSやYouTubeの発達で場合によっては売り主が自ら物件をアピールしてすでに潜在的な買い主を客付け出来ているときがあります。
買い主からしても不動産ポータルで見つけた物件を案内してもらっただけなのに不動産仲介手数料を強制されるのは違和感があるでしょう。同じような理由で、賃貸市場でもニューヨークでは借主側の仲介手数料が禁止になるようです。
「契約交渉」もアメリカでは不動産弁護士が多いので、どこまで不動産仲介業者が付加価値を生み出せるのかは、少し曖昧に見えます。

「両手仲介」の国・日本では「片手仲介」の国・アメリカから学ぶべきだ、みたいな記事をたまに見かけますが、「片手仲介」の国・アメリカからすると日本のように買い主が仲介手数料を自由に交渉できるようになることは悪質不動産仲介業者の独占を打ち破った歴史的快挙になるのでしょうか。ちなみに、この集団訴訟の原告は3組のようです。

アメリカのこの訴訟は他山の石とはいえ、「マーケティング」の点などはどの国にも共通すると思われ、DIY(Distributed It Yourself)のような考え方がより全世界的に普及する契機になる可能性もあると思います。なお、「買い主の不動産仲介手数料を売り主が決める」ことで買い主は余計なことを考えなくて良く、初回購入者にとっては優しい制度である可能性もあります。この点が崩れると、不動産の本源的価値である次の需要の喚起が停滞してしまうかもしれません。

不動産を地図で検索する

恋愛と結婚が微妙に違うように、不動産を探すときと実際に住むときの微妙な違いはあるように思います。ただ、「周辺環境」が重要というのは不動産を探すときにも多くの人が感じているのではないでしょうか。

「不動産を地図で検索する」のはそうした「周辺環境」を知りたいニーズに最も適切に応えてくれると思います。

世界の不動産サイトで地図が一番かっこよいのは、フランスのbienici.comでしょうか。3D地図、物件の周辺情報、日陰機能(下記画像の左下)などなどが分かります。このサイトが必ずしも探しやすい気はしないのですが、bienici.comは不動産業者が集まって立ち上げたサービスということで、フランスの不動産業者の底力みたいのは感じます。

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https://www.bienici.com/recherche/achat/paris-75000?limite=shgiHo%7BgM%3FmgA~i%40vP%3F%7Cc%40&camera=18_2.3450741_48.8622584_45_0

フランスのhabiteoを使うと地図情報と絡めた物件からの景色がわかるようです。

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https://megawidget.habiteo.com/programme?id=10Dqxh3LlDFIKpAmBD9Vie&%3Bkey=z3CVvKYxLYt5CvohUq0SR&%3Bedit

災害情報が最も良いのはtophap.comでしょうか。下記画像は災害情報の可視化ではないですが、雰囲気は伝わるかと思います。

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Tophapが使っている地図サービスのmapbox(placeofでも使っています)のブログを見ると、howloud.comは騒音の可視化をしたりdeepblocks.comは建築規制の可視化をしたりと、色々な事例があることが分かります。日本では、東京の公共交通のリアルタイム状況がわかるMini Tokyo 3D やある地点から15分で行ける範囲がわかる15citiesなども面白いです。

日本では国土交通省Plateau なるプロジェクトで新しい3D都市地図を作ろうとしています。災害やゲーム系の事例が多い印象ですが、不動産分野で面白そうな事例としては、「富士山が見える建物」マップとかでしょうか。
そのほかにも、日本ではハザードマップAPI提供されており、国土地理院地理院タイルも非常に充実しています。地理院タイルにあるような「年代別空中写真」「土地の条件(明治期の低湿地など)」は他の国ではあまり整備されていないように感じます。この辺に伊能忠敬以来の地図愛を感じざるを得ません。
一方で、地籍調査が明治以降あまり進んでいないことも印象的です。それは日本での土地開発主体が国家ではないことを示唆しているように感じます。日本では民間主体が各地でバラバラに開発をしてきた経緯から「道路」を見るとその土地の歴史が良く分かる気がします。

19世紀頃にハノーファー王国ガウス三角測量を依頼したことでこの分野が著しく発達しましたが、誰がどのような地図データを欲しているか、もその土地の歴史なのかもしれません。そして、日本では、良好で豊富な地図を提供している地方自治体があった場合、恐らく公共財の提供が優れており、「周辺環境」は良い可能性があります。

SNSやYouTubeで不動産流通はどう変わるか

InstagramTwitterYouTubeで物件での生活を投稿したり、インテリアを紹介したり、場合によっては次の購入者/入居者を募集する人が増えています。
また、3D内見や電子署名やなどのテクノロジーも発達しています。地図を始めとしたデータも充実してきています。
ちなみに、コロナ禍のアメリカでは63%の購入者が物件を内見せずにOfferを出したそうです。

63% of 2020 Homebuyers Made an Offer Sight Unseen, Shattering Previous Record Nearly two thirds (63%) of people who bought a home last year www.redfin.com 

購入者/入居者で非日本人の方も増えていると思われます。彼らへの不動産流通経路は、ニセコの高級物件など、少し考え方が違うように見受けられます。
そうしたなか、物件所有者は自分の物件をどう流通させるか、新しいDIY(Distributed It Yourself)のような考え方が重要になるのでしょう。