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様々な家の売り方: Distribute It Yourself

アメリカのFSBO市場について書きましたが、調べてみると他にも面白い家の売り方がいろいろありました。
ところで、アメリカの不動産市場と日本の不動産市場の最も顕著な違いは「在庫データ」が分かるかどうかだと思います。これが分かるぐらい不動産データが整備されているというのが凄いです。その他にもデータがありすぎるぐらいです。

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https://www.redfin.com/news/data-center/

1. iBuyerの台頭

まずはOpendoorなどのiBuyerの台頭でしょうか。iBuyerとはたくさんのデータをもとに高度なアルゴリズムを使った既存住宅の大量転売屋と言えると思いますが、何となくカッコイイし不動産市場に新しい流動性をもたらす可能性など期待されていたようです。
ただ、不思議なことにあまり利益を得ていないようです。恐らくOpendoorが注目され始めたこの1~2年がアメリカの不動産市場が調整期だったからだと思われます。iBuyerの良いところはすぐに現金で買ってくれるところですが、不動産価格が上がっているときはそのようなニーズは強くなく、不動産価格が下落しているときは利益を出すのが、彼らのビジネスの難しい点にある気がします。ちなみに、datadoor.ioを見るとOpendoorなどのiBuyerがどの地域でどれくらいの住宅をいくらで売ったり買ったりしたかのデータがほぼ全て分かります。
また、住宅ローンの組成をどれくらい行なったかも、こちらで分かります。昔見たときは20人くらい住宅ローンの専門家が居たのですが、今見ると0人でした。

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Sponsered MLOsが0人

2. つなぎ融資系ローン

家を売るときの一番のペインは、次の家に入居するタイミングと今の家を売るタイミングである観点から、つなぎ融資系の住宅ローンも充実しています。これらはiBuyerの逆を行くとされています。というのも、iBuyerの場合、不動産仲介業者は手数料収入を得られませんが、このサービスの場合、まずは次の家を買って引っ越してから今の家を売るので、不動産仲介業者は2回手数料を得られます。代表的なサービスとして、knockやorchardがありますが、住宅ローンの斡旋や不動産仲介で利益を得るようです。

3. アラカルト仲介

FSBOのように全てを自分でするのではなくて、不動産仲介のサービスの切り売りも増えています。Flat-MLSと言われるようなMLSデータベースに情報を掲載してもらうだけのサービス、オープンハウスに対応するオプションなど仲介業務の必要な部分だけの提供を受けることが出来ます。

4. 仲介業者が内々に売る


物件の売却を受任した仲介業者がMLSに登録する前に、自前で売ることをPocket Listingと言うそうです。売り主のプライバシーも守られ、仲介業者も両手仲介的な手数料収入になります。2021年段階で、全物件の2%ぐらいがPocket Listingされているようです。
Pocket Listingのプラットフォームもありましたが、NARの規則変更でエージェントはMLSに1 営業日以内に登録することが要求され、このサービスは停止しています。今は、NARとの訴訟中です。日本で一般媒介で契約した物件でreinsに登録していないデータベースみたいなものはニーズあるでしょうか。

5. もうすぐ売ります by 仲介業者

Pocket Listingは実質禁止になったとはいえ、もうすぐ売りますcoming soonとして表示するのはOKみたいで、compassのcoming soon のような不動産仲介業者が持っているデータで今後売る予定リストみたいなサービスがあったりします。 

6. もうすぐ売ります by 売り主

Zillowのmake me moveは、エージェントではなくて売り主がもうすぐ売りますとして直接webポータルで告知して潜在的な需要を把握するような機能です。FSBOとの違いは、今売っているか将来売るかの点にあります。このサービスは停止しましたが、奇しくもwaiting listを管理できるようにするプレイスオブの方向性と比較的近いように感じます。アメリカの不動産市場で多発しているNARに対する独禁法訴訟の行方ではこの機能もZillow内で復活する気がします。

7. 不動産オークション

数十億円するような高級物件のオークションサイトであるConcierge Auctions も興味深いです。オーストラリアだと一般の物件もオークションで売ったりしているようです。

8. 不動産エージェントのタレント化

Ryan Serhant氏のように不動産エージェントがタレント化し物件売却を依頼出来るのも面白いです。Pocket Listingのプラットフォームを作ったのもマイケル・ジャクソンの住宅を仲介した著名なエージェントでした。netflixでも不動産エージェントが主役のシリーズが結構ある気がします。

9. 著名建築家の住宅を売る

日本では著名建築家が設計した住宅とはいえ躊躇なく解体されることがありますが、、、アメリカではフランク・ロイド・ライトの家で今買えるものなどが簡単に分かるようです。何故こういう売り方が日本の不動産流通市場でもっと増えていかないのか、は難しいところです。
台湾に昔の日本式建築が多いことは知られているかと思いますが、韓国も意外に多いようです。旧満州の満鉄社宅も素晴らしいです。これらの国も自然災害が多く湿度も高いと思いますが、日本とは何が違うのでしょう。

こうした多様な売り方が増えていることは、多様な物件が社会に存在し継承されることに繋がると思われます。DIYがDo It YourselfだけでなくDistribute It Yourselfの時代になる日は来るでしょうか。

 

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