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アメリカのFSBO市場

年間600万件ほどの既存住宅取引があるアメリカではその7%ほどがいわゆる直販売であるFSBO(For Sales By Owner)という取引手段を行なっていると言われています。この数字は不動産仲介業者の団体であるNARが発表しており、彼らのデータベースであるMLSに登録されない取引が20%ほどあることにも留意する必要があります(MLSと登記ベースのデータの差)。それを考慮すると全取引の10%ほどでしょうか。

現在ではほとんどの住宅情報がネットで見れるのに、不動産仲介業者の数も平均収入も増えていることは興味深いです。
アメリカの賃貸市場では少し状況が違い、40%ほどの所有者が自分で借り主を探しており、残りの大部分の所有者も管理会社に任せているようです。大都市では、賃貸市場で仲介業者を使う傾向があるようですが。

zillowによると所有者の36%ほどが売るときにFSBOを試みるそうですが、結局大多数が諦めてしまうようです。FSBOの場合は住宅取引時の差別を禁止した「住宅公正法 fair housing act」の対象外のようですが、それでも色々と難しいようです。

価格面でも、NARによると不動産仲介業者を使った場合とFSBOの場合では、FSBOの方が安くなるようです。一方で、そうしたNARの主張には疑問を呈する声やそもそも不動産仲介業者が自分の物件を売るときと業務で他人の物件を売るときに価格差があるのでは、という指摘もあります。

不動産仲介業者の数も平均収入も増えているこうした状況をある種の「独占」、と捉えているような訴訟も増えています。
①倒産したrex社が不動産ポータルのzillowを訴えているもので、NARがMLS掲載物件と非MLS物件を同一ページに表示することを禁止した規則により損害を与えられたというもの(Real Estate Exchange Inc v. Zillow Inc, U.S. District Court, Western District of Washington, 2:21-CV-00312-TSZ)
②サービスを停止したPLS社がNARを訴えているもので、不動産仲介業者が物件を扱うときに即時にMLSに掲載しなければならないとした規則により損害を与えられたというもの(The PLS.com LLC v The National Association of Realtors et al, U.S. District Court, Central District of California, 2:20-cv-04790-JWH-E.)
③以前も取り上げた、「売り手が買い手側の不動産仲介業者手数料を決める」規則により損害を与えられたというもの
MLSがNARの規則に従っていることに対する訴訟(Nosalek v. MLS PIN)。一旦和解しましたが、司法省が介入裁判続行に。

こうした訴訟合戦はもっとエンターテイメントとして楽しめる気がしますが、もし仮にこうした規則全てが撤廃になったら、MLSを使わない物件が増えたり、買い手側と売り手側の仲介業者が同じになったり(両手仲介?)、するのでしょうか。MLSではない新しいデータベースが生まれてくるかもしれません。

そしてプレイスオブのようにFuture Sales By Ownerのようなサービスがアメリカで普及して、所有者がすでに客付けが出来た段階で物件を売ろうとするならば、どうなるのか興味はつきません。

(実験的にnote.comに記載した内容をhatenaブログにも持ってきてみました)