waiting-listのブログ

placeof - プレイスオブ の開発ブログです

「物件への投げ銭」機能をベータリリースしました

概要

placeofは、物件をお持ちの方が、その物件の細かいスペックや特徴や生活を投稿して、「次の人」とつながるサービスです
今回、そうした物件に潜在的な興味を持った将来の購入者や借り主の方が、その物件への興味を示すことが出来る「物件への投げ銭」機能をベータリリースしました。

開発の背景

物件は「次の人」を適切に見つけることが出来たときに、文化・歴史の継承、そして富の蓄積がされます。
日本を始めとして多くの国で「人口減少社会」になるときに、「次の人」を見つけることはこれまで以上に難しくなっています。
ところで、アメリカで昨今発生している住宅不動産仲介手数料に関する巨額訴訟は、Webポータルの発展が購入者/借り主の行動を大きく変化させていることを示唆しているところ、YouTubeInstagramTwitterなどで物件情報を発信する方も増えています。
そうしたときに将来の潜在的な需要と供給をマッチングするような機能があると面白いのではないか、と思い開発しました。

この機能の使い方

①アカウント登録

https://www.placeof.app/register

② (物件をお持ちの方)物件の投稿

https://placeof.vercel.app/places/new 

③物件ページで「Add to waitlist」ボタンを押す 

④購入するWaitingバッジを1つ選ぶ

現在Waitingバッジには3種類あります。購入するWaitingバッジによって、物件をお持ちの方に送れる内容が異なります。

  • 「300円」 物件ページにバッジを表示します。

  • 「500円」 物件ページにバッジを表示し、物件ページを作成したユーザーに連絡先を送付出来ます。

  • 「1000円」 物件ページにバッジを表示し、物件ページを作成したユーザーに連絡先と50文字以内のメッセージを送付できます。

⑤購入画面で購入する

「クレジットカード」「PayPal」で購入できます。現段階では、不正防止のため、購入画面はリロード出来ないのでご注意下さい。

⑥(購入者)Waitingバッジの表示を確認

物件ページで購入したWaitingバッジが表示されていることを確認して下さい。
もし連絡先を送付していた場合、物件をお持ちの方が将来売却や賃貸をするときは連絡が来ることがありますので、そのときがくるまでWaitして下さい。

⑦(物件をお持ちの方)Waitingバッジのメッセージの確認

物件ページでWaitingバッジが購入されると、placeof.appよりメール通知が来ますのでご確認下さい。
Waitng Listの管理はダッシュボードで出来ます。
また、Waitingバッジの総額に基づき収益分配を行います。現段階では、条件を満たしたときに、amazonのギフトカードを送付します。

おわりに

この機能を通じて、多くの物件が適切に継承され、それが多くの方の富の蓄積につながれば良いなと思います。
ベータリリースということで色々改善点があると思っています。もし何かあればplaceofのお問い合わせページよりお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

 

物件への関与者フォームの大幅な修正について

物件への関与者フォームを大幅に修正しました。
下記画像のように「左官」「ガーデニング」「家具」「大工」など通常の物件投稿フォームにはないような職種も追加してみました。こうした職人的な方々を含めてどのような方が物件に関与したかが分かるようになることは今後重要になると考えています。また、英語表記にも対応しました。

 

 

是非ご確認ください

 

https://placeof.app

結局REINSは必要なのか?

REINSのような不動産データベースが無い国は、意外に多いです。不動産透明度インデックス上位の国でアメリカ・カナダ以外には無いと思われます。

日本には一応ある訳ですが、

  • 売買での両手仲介が40%程度 https://diamond-fudosan.jp/articles/-/148998
  • 「未公開物件」が相当あると思われる レインズの売買成約件数(14万件)のと所有権移転登記(FRKの推計で50~60万件)での差。
  • 一般媒介が20~30%。
  • REINSにデータを入稿しても、ポータルサイトに自動で連携されない。同じデータをポータルサイトに入稿する必要がある。
  • 特に、「良い物件」の売却依頼が来た仲介業者は、他の仲介業者と連携するためにレインズに登録するインセンティブも必要性も無いように見える。
  • 2012年の国交省の資料によると、実際に物件の詳細を登録するケースは少ない。

など不動産データベースが有効活用されているのかされていないのか、良く分からない感じがあります。

 

「おとり物件」はその象徴に感じます。

 

不動産データベースの国代表格であるアメリカでは全不動産業者に半強制的にデータを出させるようなルール運営をしています("Cooperation Policy"など)。そしてwebポータルには、その不動産データベースから自動的にデータが連携されるので、「おとり物件」のようなものが考えにくいです。zillowのようなwebポータルで物件情報を修正するには、不動産データベースのデータを修正する必要があります。なお、正確な数字は不明ですが、一般媒介契約(open lisiting)はそこまで普及していないようです。

不動産データベースが無い国で、売り主か代理人が自分のネットワーク以外で不動産を売るには、基本的にはwebポータルにその物件を投稿する必要があるわけですが、所有物件を売り主か代理人が投稿するので「おとり物件」のようなものが無いのだと思います。あったとしてもそれは明確に「詐欺」として処理されるのではないでしょうか。

 

日本は「財産権」なり「個人情報保護」なりでアメリカのように半強制的にデータを出させるようなルール運営を出来る素地が無く、実質的には不動産データベースが無い国なのだと思います。「おとり物件」は「自己情報コントロール権」のようなものを侵害しているという意味で、「財産権」なり「個人情報保護」なりの観点から問題があるような気もしますが、良く分かりません。

 

極論かもしれないですが、「おとり物件」を無くすにはREINS自体を無くすのも一つのアイデアに思えます。

不動産仲介業の最も非効率な部分とは?

不動産仲介業の最も非効率な部分は、売り手側・買い手側に限らず、「集客」(最近風に言うならばlead generation)にあるようです。

https://www.sumave.com/20190809_12715/

https://www.lij.jp/news/research_memo/20150501_1.pdf

逆に言うと、ある程度検討内容が決まっている方同士を「仲介」するのはコストがそこまで掛からないのかもしれません。realtor.comがlead qualificationをするopcityを買収したときのその買収の背景に関するブログの下記のようなコスト構造の図も参考になります。

https://www.mikedp.com/articles/2018/9/06/opcity-lead-conversion-and-the-journey-down-the-funnel

lead qualificationのような産業の発展も重要なのでしょうが、不動産仲介業界が良質なlead generationを生み出していくには、そうした検討内容が決まった人を作っていく必要があり、そのためには事前に多角的に検討できるような良質なデータが必要なのだと思います。

どちらかというと、日本の不動産業は「重要事項説明」レベルの情報でさえ可能な限り後に開示して、事前の検討を嫌う傾向がある気がしますが、それは不思議に感じます。

もし「集客」コストが下がった場合は、他のことにコストを注げて、それが付加価値になる気もします。

 

たまたま保存していたtweetですが、このような提案がもっと増えても良いと思います。

 

不動産仲介業が手数料額にどこまでこだわっているのかも考える必要があり、実際に豊富なデータが開示されているアメリカの研究(『ヤバイ経済学』の著者)」では、不動産仲介業者が自分の家と同じような他人の家を売るときには、価格に差があるようです。他人の家を売るときは、価格にこだわるよりも速く売る方がインセンティブが強い可能性が指摘されています。

https://financialpost.com/real-estate/the-realtor-client-dilemma

 

SNSYouTube時代の不動産市場で、placeof の世界観のように「潜在的な買い手」と「潜在的な売り手」のマッチングが上手くいくならば、そのまま直取引するケースもあるでしょうが、多くの場合は第三者の仲介を必要とすると思います。
自ら「潜在的な買い手」を客付けした売り主からどの買い手に売るべきかのアドバイスをして欲しい、というようなときどのような付加価値が生まれるのでしょうか。アメリカではzillowが"make me move"のようなサービスを一時的に展開したのちにサービス停止しましたが、昨今の不動産仲介業界の訴訟祭りが終わった宴のあとに買い手側エージェント産業からの売上がなくなると、恐らくまた復活される気もします。

 

waiting-list.hatenablog.com

 

waiting-list.hatenablog.com

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https://placeof.app

 

placeofのスペック詳細フォームの実装について

shadcn/uiを使ったサジェストフォームのサンプルとして下記のようなものがあります。 https://www.armand-salle.fr/post/autocomplete-select-shadcn-ui 

運営されているarmandさんのgithubのソースコード

placeof - プレイスオブの物件スペックを入力する画面では、このサンプルにreact-hook-formやzodを使った実装をしています。

suggestのロジックの変更

上記実装で使われている、shadcn/uiのComboboxcmdkのComboboxをwrapしたものです。suggestのロジックを変更したかった(+日本語だと上手くいかない気がした)ので、cmdkのドキュメントに記載されている通りfilterに独自実装を追加してます。sortとかも出来るようです。 https://github.com/armandsalle/my-site/blob/main/src/components/autocomplete.tsx#L88 を下記のようにします

<CommandPrimitive
  filter={(value, search) => {
    if (value.includes(search)) return 1
    return 0
  }}
...
/>

keyの値でvalueのバリデーションをする

keyの追加時の処理

keyとvalueの2つのフォームがあり、keyの値でvalueの値をvalidationする必要するときの実装です。suggestをするkeyがhandleKeyDownなどで確定するときに、onValueChangeで親のComponentの関数を呼び出していますが、そのときに、

 onValueChange={(key: SuggestKey) => {
    form.setValue("suggestKeyId", key.suggestKeyId)
    form.setValue("suggestValueType", key.valueType)
}}

のようにreact-hook-formのsetValue関数を使い、確定したkeyをformに追加します。なお、このときに下記のようにreact-hook-formのformが定義されています。

  type Inputs = z.infer<typeof SuggestKeyFormSchema>
  const form = useForm<Inputs>({
    resolver: zodResolver(SuggestKeyFormSchema),
    defaultValues: defaultValues,
  })

valueの追加時の処理

下記のようにvalueをregisterします。

    <FormItem>
      <FormControl>
        {specKey?.valueType === SpecValueType.TEXTAREA ? ((
          <Input
            aria-invalid={!!form.formState.errors.value}
            {...form.register("value")}
          />
        )}
      </FormControl>
    </FormItem>

そして、下記のようにzodのsuperRefineを使ってvalidateします。このときkeyを追加したときのvalueTypeが使われます。

export const SuggestKeyFormSchema = z
  .object({
    suggestKeyId: z.string().min(1),
    valueType: SuggestValueTypeSchema,
    value: z.string().min(1),
  })
  .superRefine((values, ctx) => {
    if (
      values.valueType === SuggestValueTypeSchema.STRING &&
      values.value.length >= 20
    ) {
      ctx.addIssue({
        message: "need to be less than 20 words",
        code: z.ZodIssueCode.custom,
        path: ["value"],
      })
    }

   ....
  })

i18n

ちなみに、keyはi18nのファイルを参照するようにして表示しています。

suggest一覧の変換箇所 https://github.com/armandsalle/my-site/blob/main/src/components/autocomplete.tsx#L36

確定したkeyの変換箇所 https://github.com/armandsalle/my-site/blob/main/src/components/autocomplete.tsx#L128

詳しくは下記のzenn記事にあります。 i18n一般 https://zenn.dev/k0kishima/articles/956ba3f3dc9629  

zodのi18n https://zenn.dev/aiji42/articles/171f26af4e5b5c

サーバーからデータを取得

サーバーからデータを取得する場合は、こちらのzenn記事が参考になるかと思います https://zenn.dev/mktu/articles/2f9166374d09a0

まとめ

マスターデータをまだそこまで用意できていないのですが、もっと完成度を高めて物件のありとあらゆるスペックが入力できるフォームにしていきたいと考えています。

アメリカの住宅仲介業界で「日本化」されないもの

アメリカの不動産業界での訴訟が数年掛かるのでは、と昨日(2024/3/16)記載しましたが、今朝起きたら電撃的な和解をしていました。

一部の訴訟を除いてこの和解により、一連の訴訟は終了するようですNARのプレスリリースを見てもこれが解決になっているのか、良く分からなかったのですが、司法省がまた介入したりするんですかね。

昨日は「日本化」されるものについて考えてみましたが、今日は「日本化」されないものについて考えてみたいです。
恐らく、それは「データの徹底的な公開」だと思います。日本では「財産権」とか「個人情報保護」とかで中途半端になりがちな「データの公開」はアメリカでは引き続き徹底的にされると予想します。というのも、それが「新規参入者」にとり一番優しく、年間600万件の取引がある既存住宅取引を成立させる条件だと思われるからです。
ただ、この「和解」案が確定するのかは分かりませんが、恐らくMLSを使わないような取引が増える気がします。そのときに、どのように全取引を把握するのか、は課題であり、MLSを変えるのか、登記のあり方を変えるのか、は興味深いです。現状、アメリカの既存住宅取引の全取引の20%ぐらいMLSを使わないようですが。
アメリカの「住宅公正法」は住宅取引時の差別を禁止していますが、差別を許容すると住宅取引が停滞するというような「データの徹底的な公開」と同じような観点もあるように感じます。他国の事例とは言え、プレイスオブのように潜在的な売り手と潜在的な買い手がマッチングするような世界観がどう表現されるべきなのか、を考える契機になっています。潜在的な売り手と潜在的な買い手がマッチングすることがそうした立法の趣旨にあうようにしていかなければならないのだと思われます。

ちなみに、日本では全取引の何%がREINSを使わないのか、とかそういう分析は無いようです。

アメリカ住宅仲介業界の「日本化」?

アメリカの住宅売買仲介業界では今6つほど大きな訴訟があり、そのうちの一つは損害賠償額が2000億円程度が地裁の陪審レベルで確定しており、6つの訴訟が全て終わるのは数年ごとは言え10兆円の手数料収入があるアメリカの住宅仲介業界が大きく変わる気がします。一言で言えば「日本化」でしょうか。

  • アメリカでは売り手と買い手にエージェントが着く慣習があったが、少なくとも買い手側のエージェントは消滅する可能性が高い

  • MLSに登録されないが登記を見ると権利の変動があるような「未公開物件(Pocket Listing)」や「FSBO」は現状全取引の20%ぐらいだが、それらが増える可能性。

  • 売買手数料を一人のエージェントが得る「囲い込み」「両手仲介(dual agency)」が増える可能性。なお、現段階で、一部の州ではdual agencyは違法。

などなどでしょうか。
redfinの"Redfin Predicts a More Balanced Housing Market in 2022" https://www.redfin.com/news/housing-market-predictions-2022/ の予測10でも大体同じこと言っている感じがします。他にもYouTubeで"doj real estate comission"とかで検索すると色々な人が色々なことを言っていますが、誰が正しいのか良く分かりません。

案外、「正直不動産」とか今のアメリカで人気になるかもしれないです。